最二小判H26.1.24(残業代請求事件)
2015年08月25日
平成26年1月24日最高裁第二小法廷判決(平24(受)1475号)
1. 事案の概要
Xは添乗員として旅行会社に派遣され、海外旅行ツアーの添乗員をしていました。添乗員としての業務は、出国手続や搭乗手続、現地における交通機関・レストラン等の手配に加え、旅行の道程管理や、ツアー参加者からの要望があればそれに応える等の業務も行っていました。
Xの契約内容によると、労働時間は原則として午前8時から午後8時まで(休憩を除くと11時間)でしたが、実際の労働時間は11時間を超えることがありました。しかし、派遣元Y社はXの業務が「労働時間を算定し難いとき」(労働基準法38条の2第1項)にあたるとして、Xに残業代を支払いませんでした。そこで、Xが残業代の支払を求めて提訴しました。
2. 判決要旨
まず、最高裁は、Xの添乗員としての業務を以下のように認定しました。
- ①本件の添乗業務は、業務の内容があらかじめ具体的に確定されており、添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られている。
- ②本件添乗業務について、旅行会社は、添乗員にあらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で、予定された旅行日程に途中で相応の変更を要する事態が生じた場合にはその時点で個別の指示をするものとされ、旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされていた。
そのうえで、以上のような業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、本件会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等に鑑みると、Xの勤務状況を具体的に把握することが困難だとは認めがたいとして「労働時間を算定し難いとき」には当たらないと判断して、残業代の支払請求を認めました。
3. 実務に与える影響
これまで、「労働時間を算定し難いとき」(労働基準法38条の2第1項)にあたるかについて判断を示した最高裁判例はありませんでした。本判例は、「労働時間を算定し難いとき」にあたるかの判断に際し、業務自体の性質・内容・その遂行の態様等、業務に関する指示及び報告の方法・内容・その実施の態様等という点から労働者の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったかどうかを判断の基準にするとして、判断要素を摘示しました。
本判例は事例判断ですが、今後「労働時間を算定し難いとき」にあたるかが問題になったときは、本判例が示した判断要素を基準に事実を主張していくことになる点で影響の大きい判決であるといえます。今後の労働時間管理は本判決を踏まえ慎重に行う必要があります。








